遺留分請求の時効と手続きの解説
2024/11/04
遺留分の請求(遺留分侵害額請求)は、相続人の重要な権利の一つです。他の相続人が被相続人から遺贈や相続分を受け取った場合でも、法定相続人としての最低限の権利を守るための手続として非常に重要です。本ブログでは、遺留分請求に関する時効や手続について詳しく解説します。また、法律の専門家である弁護士が、具体的な事例を交えながら、遺留分を請求する流れについても説明します。
目次
遺留分請求の重要性とは?相続における基本を理解しよう
遺留分請求は、相続における法定相続人の最低限の権利を保障するために欠かせない手続きです。
例えば、他の相続人が被相続人から遺贈を受けたり、遺言により遺産の多くを相続する場合、遺産分割の対象となる財産が少なくなる結果として、すべての財産を対象として法定相続分に基づいて遺産分割するときよりも、相続できる財産が少なくなってしまいます。特にすべての財産が遺贈などの対象となっている場合には、他の相続人は、全く遺産を相続することができなくなってしまいます。このような場合に、遺贈などを受けなかった他の法定相続人に最低限の遺産相当額の取得を保証する制度が遺留分制度です。
して遺産分割の対象となる財産が少なくなる場合でも、遺留分を請求することを通じて最低限の相続分を確保することができます。
遺留分を請求する場合の流れ
具体的な手続としては、まずは遺留分の計算を行い、どの程度の金額を請求できるかを確認します。その後、遺留分を侵害する遺贈などを受けた相続人などに対して遺留分を請求する旨の書面を作成し、相手方に通知します。ここで重要なのは、この通知後に相手方との話し合いを持ち、可能であれば合意を目指すことです。合意が難しい場合には、訴訟への移行も視野に入れる必要があります。
遺留分請求手続きの具体例:弁護士が教える注意点
遺留分請求は、相続における重要な法的手続ですが、その時効に関する理解が不可欠です。遺留分侵害額請求権は、相続開始(自らが相続人になったこと)及び遺留分を侵害する贈与などがあることを知った日から1年、または、相続開始を知らなかった場合には相続開始から10年が時効期間となっています。この期間を過ぎると遺留分侵害額請求権が消滅してしまうため、相続の開始をしった場合には迅速な行動が求められます。具体的には、遺留分の請求を行う際には、まず遺言書の内容を確認し、自らの遺留分が侵害されているか否かを判断します。その上で、遺留分を侵害している他の相続人などに遺留分侵害を理由とする遺留分侵害額請求をする旨を通知する通知書を作成し、相手方に送付します。この通知書は、後に訴訟に移行する可能性を踏まえ、内容証明郵便を利用して送付することが大切です。
遺留分が侵害されているか否かの確認
遺留分が侵害されているか否かを判断するためには、様々な資料を集めることが必要です。
第1に、遺留分の侵害と評価される行為は、遺言書によってなされることが多いので、被相続人が遺言書を遺しているか否かを確認することが必要となります。遺言書が公正証書で作成されている場合には、公証役場に問い合わせることでこれを確認することができますし、被相続人が法改正によって導入された遺言書保管制度を利用している場合には、法務局に遺言書の保管の有無を確認してみることが必要となります。
第2に、被相続人の財産の全体像を把握することが必要となります。不動産、預貯金、株式等の金融資産について調査をすることになります。不動産については、いわゆる名寄せ帳を取得することで広く確認することができますし、相続人は、被相続人との関係を戸籍謄本などで証明することで金融機関に対して取引履歴などの発行を求めることができます。
第3に、集めた資料によって遺留分が侵害されているかを検討することになりますが、この計算は大変複雑です。また、この計算に当たっては、上記以外にも考慮される事柄があります。そのため、遺留分侵害の有無を正確に把握するためには、弁護士などの専門家に相談することが大切です。
弁護士に聞く!遺留分請求時の実際のケーススタディ
繰り返しになりますが遺留分の請求にあたっては、原則として1年間という短い期間内に権利行使をすることが必要となります。しかし、この期間内に急いで権利行使をしない方が少なくありません。弊所の取扱例でも時効期間の満了直前になって遺留分侵害を解決したいとの相談を受けたこともあります。
また、遺留分を請求するにあたって作成する通知書も、その内容によっては時効期間内にこれを請求したものとは評価されない場合があります。過去の判例においても、遺留分権利者が遺留分侵害者に対して送付した書面が遺留分を請求する書面であると評価されなかった場合があります。
このように遺留分を請求するにあたっては、落とし穴というべき部分があります。この落とし穴に落ちないためには、遺留分侵害の事実を知ってすぐに弁護士などに相談することが大切です。